先々週だったか小説家の北方謙三をドキュメンタリーで特集をしていた。私は北方謙三の小説を読んだ事もなければ、本人についてもまったく興味はなかったのだが、そのテレビを見た。そのテレビによると北方はハードボイルドという日本になかったジャンルを確立し、日本の第一人者になったらしい。最近は歴史小説に挑戦し三国志、水滸伝という小説を手がけたということだ。

何よりも驚いたことは一日50枚以上の原稿を書き、月間確か500枚だったかの原稿を書き上げていることだ。プロであろうとそれだけの枚数書き上げることはいかに大変なことであるかはよくわかる。それが、処女作であればまだしも、何十か何百かわからない本を書き上げてきたのにどんどんとアイディアが出てくるところがすごい。凡人ならばとうの昔に煮詰まってしまっていただろう。

北方が書斎で机に向かい小説を書く場面がテレビに映し出されていた。小説を書く前に彼は必ずやる儀式があるという。何か?ブラシで髪をとかすことと葉巻をふかすことだ。それから、ゆっくり原稿に向かい小説を書く。書き始めたら次から次へと言葉が原稿用紙につづられていく。そして、また行き詰ったらブラシで髪をとかす。その繰り返しだ。それにしても、一旦原稿を書き始めたらそのスピードたるや本当にはやい。すらすらと万年筆が原稿用紙の上をすべっていく。さすが一流のプロといった感じだ。

北方がそれをテレビのインタビューに答えてこういっていた。「小説を書いている時は小説の神様がついていて、書かせてくれている」。詳しくは忘れたそんなことを言っていた。事実であろう。彼には小説の神様のお守りがあるのであろう。あの映像を見せられるとそう思う。

北方が小説で書きたい事それは「いかに男は死ぬべきか」ということらしい。いかに死ぬべきかということはいかに生きるべきかということだ、とも彼は語っていた。北方の絶大な人気はここにあるのではないかと思った。そして、機会があれば三国志や水滸伝を読んでみたいという気にさせられた。魅力的な人物であった。

北方さんに一点アドバイスを。書斎の机の位置はいいのですが、向きが逆ですよ。それは反背(はんぺい)といってアイディアに煮詰まる形ですよ。窓を背にしましょう。それでもあれだけ書けるのですから天才ですね。でもそれも直せばもっとはやく神がかり的になれるし、もっとどんどんアイディアが沸いてくることでしょう。